骨粗鬆症
骨粗鬆症

骨粗鬆症は、骨密度と質の低下により骨折しやすくなる病気です。転ぶなどちょっとした衝撃で、背骨(脊椎圧迫骨折)、太ももの付け根の骨(大腿骨近位部骨折)などが骨折しやすくなります。骨折が起きたときの影響は甚大です。
例えば大腿骨近位部骨折では、95%で手術が必要となり、多くの方は生活の自立ができなくなります。骨折後1年以内の死亡率は2倍になり、5年生存率は49%です。がんの全部位全臨床病期の5年生存率は67.9%であり、それに匹敵する状況です。脊椎圧迫骨折の生命予後も悪く、椎体骨折がある場合の10年生存率は69%で、椎体骨折が多いほど生存率が下がったことが報告されています。
骨折すると生活の質(QOL)の低下を引き起こします。脊椎骨折は元の形には戻せないので、腰が曲がっていきます。その結果、腰痛に悩まされたり、転倒しやすくなったりします。酷くなると肺や腹部を圧迫してしまい、呼吸障害や逆流性食道炎を起こします。なお骨折・転倒は、要介護になる原因の3位で(2019年厚生労働省検査結果)、健康寿命低下の大きな要因になっています。
高齢化に伴って増加する骨粗鬆症は、近年、生活習慣病のひとつと考えられています。しかし進行しても骨折を起こさない限り症状はないので、検査しない限り発見は困難です。未治療でいると連鎖的に骨折を起こし、不可逆的な症状を起こすため、予防や早期診断が注目されています。
私たちの骨も新陳代謝をしており、古い骨を壊し、新しい骨に作り替えています。女性ホルモンは主に破骨細胞を抑えておりますが、閉経によって女性ホルモンが減少すると破骨細胞を抑えきれなくなり、骨粗鬆症が進行します。なお、骨密度は、一般的に20歳までにピークを迎え、以後増えることなく閉経まで横ばいになります。閉経後は急激に低下をしていきます。この低下を、運動や食事で完全に抑え込むことは困難です。
図1 加齢による骨量の変化(準備中)
また、男女問わず、ダイエットや偏食(カルシウム摂取不足)、運動不足、日光照射不足、喫煙、過度のアルコール摂取などの生活習慣や糖尿病、ステロイド投与歴、腎機能障害は骨粗鬆症の原因となります。
生涯を通じての骨粗鬆症の予防は、骨量減少を最小限にとどめることを基本とし、生活の中で除去できる危険因子を早期に取り除くこと、といえます。
骨粗鬆症の診断は、脆弱性骨折(軽微な外傷で起きる骨折)の有無、および骨密度の数値などを参考にして行います。診断がつけば、他の疾患が原因となっていない原発性骨粗鬆症なのか、あるいは疾患が原因となっている続発性骨粗鬆症なのかを鑑別し、その結果をもとに治療方針を検討します。
問診
問診では骨粗鬆症に関して質問します。食事や運動、飲酒・喫煙などの生活習慣や、これまでの骨折および病気の既往、骨粗鬆症の原因になりうる薬剤の使用歴、年齢や閉経の時期などをうかがいます。これらは診断するうえで大切な手がかりとなります。
身体診察
身長と体重、背骨の変形、背部痛の有無などについて確認します。25歳頃の身長と比べてどの程度縮んでいるかということも、診断するうえでの指標になります。
レントゲン検査
背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形の有無、を確認します。他の病気と区別するためにも必要な検査です。
骨密度検査
骨密度は骨の強さを判定するための代表的な指標です。骨の中に含まれるカルシウムやミネラルなどの量(骨塩量)を測定し、骨の強度を評価する検査です。
DXA(デキサ)法(骨密度検査)
波長の異なる2種類のX線を用いてその吸収率の差から、骨密度を測定します。全身のほとんどの骨を測ることができます。一般的に腰の骨(腰椎)や足のつけ根(大腿骨近位部)の骨密度を計測します。若い人の骨密度の平均値(YAM)と比較した割合がパーセントで示されます。現在、骨粗鬆症に関して、最も精度が高い検査と考えられています。
MD法
エックス線撮影画像の濃淡や皮質骨の幅から骨密度を評価する方法で、第二中手骨と厚さの異なるアルミニウム板を同時にX線撮影し、骨とアルミの画像濃度を比較して骨密度を推定する方法です。診断には使用できますが、薬による治療効果を短期間でみることを苦手としております。板橋区の骨粗鬆症健診で使用されます。
採血検査
骨代謝マーカーやビタミンD濃度の測定、血中カルシウムや腎機能のチェックを行います。治療効果判定や続発性の骨粗鬆症の精査、薬物による副作用チェックなどに使用されます。
骨粗鬆症は痛みなどの自覚症状がなく、発症し進行するケースがほとんどです。背中や腰に痛みを感じたり、身長が縮んだりといった自覚症状が出た時には、骨折が起きて重症化している可能性があります。早期の診断と治療がとても重要です。
骨密度検査は、骨の健康を知るうえで重要な手がかりとなります。とくに女性は症状が無くても、40歳を過ぎたら定期的な骨密度検査をお勧めします。
骨粗鬆症では「古い骨を壊す細胞(破骨細胞)」の働きが強くなりすぎてしまうため、その活動を抑えることで骨密度を維持・改善します。
ビスホスホネート製剤
骨に沈着し、破骨細胞の動きを抑えます。骨粗鬆症治療において広く一般的に使用される薬です。内服・点滴と幅広い投与法があります。下記にある活性型ビタミンD3製剤と併用することで、効果があがることが報告されています。
SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレータ)
女性ホルモン(エストロゲン)に似た作用を持ち、閉経後の女性に多く用いられます。エストロゲンと異なり、乳がんや子宮がんのリスクにはなりません。
デノスマブ(抗RANKL抗体)
破骨細胞の形成に関わる物質をブロックし、骨吸収を抑える薬です。6ヶ月に1回の皮下注射となります。投与を途中で中断すると、急激に骨密度が低下してリバウンドを起こすリスクがあるため、自己判断での中止は禁物です。
活性型ビタミンD3製剤
腸管からのカルシウム吸収を促進し、骨の代謝を改善します。
骨をつくる「骨芽細胞」の働きを活性化させ、新しい骨を積極的に作って骨密度と骨質を改善する薬です。
PTH(副甲状腺ホルモン)製剤
骨を作る細胞(骨芽細胞)を増やし、骨を作る働きを促進させる働きがあります。自分で注射するタイプ(毎日、または週2回)や、病院で週1回注射するタイプがあります。終了後、上げた骨密度を維持するために他のお薬へ移行する「逐次療法(ちくじりょうほう)」が必須です。
ロモソズマブ
(抗スクレロスチン抗体)
骨を作る働きを強力に促進するだけでなく、骨を壊す働きを「抑制」するという、2つの作用を併せ持った薬です。骨折リスクが非常に高く、早期に骨密度を上げる必要がある方を対象に投与します。月1回の皮下注射を12ヶ月間行います。こちらも逐次療法が必須です。
骨を強化する生活習慣のポイントは、食事・運動・日光浴です。良い習慣を身につけて、骨粗鬆症を予防しながらイキイキとした毎日を送りましょう。
骨密度を増加させるためにはカルシウムの摂取とともに、カルシウムの吸収を促進するビタミンDや、骨へのカルシウムの取り込みを助けるビタミンKなどの栄養素も必要です。エネルギーと栄養素を過不足なく摂取することがポイントになります。
カルシウム
牛乳・乳製品は、カルシウムの含有量が豊富なだけでなく、吸収率もすぐれています。適量の牛乳・乳製品を積極的に摂りましょう。カルシウム摂取量を増やす工夫として、小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻、豆腐などの大豆製品なども取り入れると良いでしょう。
ビタミンD
ビタミンDは骨量を保つうえで重要な栄養素で、食事と日光(紫外線)から体内に供給します。魚類やきくらげなどの食品を意識して摂りましょう。ビタミンDは日光が皮膚に当たることで活性化します。手や足に1日30分から1時間程度、日光を浴びるだけでも効果が期待できます。
ビタミンK
ビタミンKは納豆やほうれん草、春菊などの緑の葉物野菜に多く含まれています。納豆の習慣的摂取は骨粗鬆症による骨折のリスク低下と関連している可能性が報告されています。
このほか、ビタミンB、ビタミンCも関わっております。重要なのは特定の栄養素のみを摂取するのではなく、たんぱく質を含めたバランスの良い摂取が基本になります。
運動不足は骨密度を低下させる要因の一つです。適度な運動は骨に圧力がかかり、その刺激が骨の形成を促進します。日常のなかに散歩や階段昇降などの運動を習慣として取り入れましょう。
また、運動は転倒予防にも重要な役割を担っています。運動不足は筋肉量の低下を起こし、転倒リスクが高まります。転倒は高齢になるにつれて発生頻度が増加しますが、転倒により、大腿骨頚部を骨折してしまうと寝たきりの生活を余儀なくされます。
無理のない運動を継続して行い、骨と筋肉の健康を維持していきましょう。
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